カスタマーコンサルティングチームの寺本 敬太です。
今回のCRMデータ概要では、ご相談いただく事も多いLTV(Life Time Value)の最大化について、コンタクトセンターやチャネルの考え方と、CDPに格納するデータ整理について解説していきます。
LTVの利点
顧客生涯価値とも言われるLTVは最近ではお問い合わせをいただく事も多く、特にメインターゲット層に既に浸透してしまった商材やサービスを展開している事業会社様にとっては新規獲得でコストを払うよりも、既存の顧客に対するアプローチを強化したほうが投資効果がよく、そのためにどうやって成果であるLTVを向上させればよいのか?と悩まれている印象があります。
CDPという顧客データプラットフォームがある前提で、ロイヤリティ顧客(ファン)に対してどのようなコミュニケーションで接点を持ち有効なデータを蓄積していくべきかについてのアプローチの1つの参考になれば幸いです。
チャネル基点ではなく、商材・サービス基点で購買後の期待値を類推
顧客とのチャネルが多種多様にある現在では、どのようなチャネルを使うかという考えになりがちです。(もちろん、マルチチャネル化して顧客を囲い込むというリソースや予算がある企業は別ですが・・・)最適な選択を最適な投資効果で実施したい際は、チャネル基点ではなく自社の商材やサービス基点での顧客の態度変容を想定してチャネルを選択していくという方法が良いと考えています。
例えば顧客とのメインコミュニケーションに「電話」を選んだ場合、もちろん電話でのコミュニケーションはゼロになることはありませんが、デジタル世代(Z世代)などの台頭によりコンタクトセンターにおけるタッチポイントのシェアとしては、チャットやメールに押されて電話自体はチャネル数はシュリンクしていくことは容易に考えられます。
その際に、シュリンクしていくタッチチャネルに投資するのか?という話になってしまい、結果チャネル単体での投資効果の判断となり、チャネルを横断した顧客体験の向上という世界からは離れてしまい、顧客体験の質が下がり、残念ながら本来期待していたLTV数値も下がります。
下記はあくまでイメージですが、自社の商材やサービスにより顧客の満足度や期待値は時間に伴い変化し、その曲線は多種多様であると考えられます。業務やサービス領域の話をすると大幅にそれてしまいますので、ここでは大枠で2つの領域で考えます。
- 機能という差別化が可能な商材・サービス
- 継続することにより体感がある商材・サービス
例)ITガジェットやAV機器
例)健康食品・サプリメントや化粧品
機能モデルで見た場合、購買直後は継続使用し満足しますが、新機能付の新製品が出るタイミングで満足度は下がります。逆に継続モデルで見た場合、効果実感のタイミングによりますが、劇的な変化が難しいため徐々に満足度が下がります。
このように、顧客の購買後からの満足度や継続意向については、商材・サービスの種別により購買経過時間毎に大きく変容する事が判断できます。そのため、顧客の購買後からの態度変容を類推し、またデータとして蓄積・把握した後、顧客行動を分析するにことにより初めて自社にあわせた最適なタッチチャネルを選択する事が可能となり、どのようなコミュニケーション設計が最適なのかを把握することができると言えます。
コミュニケーションの必要な商材・サービスとは
LTVの向上に役立つと言われているタッチチャネルの中でも、特に電話やチャットなどの双方向のコミュニケーションが必要な商材・サービスとはどんなものが良いのかとよくご質問いただきます。
前項の「継続することにより体感がある商材・サービス」がそれにあたると考えており、例えば、化粧品や健康食品など日々の向上はしているけど、数日ではわからないという商材については双方向でのコミュニケーションを通じて、顧客が自分で気づく力やその時点での不満などを吸収することにより、継続に導くことができ、また顧客の購買時期による態度変容のデータ収集も可能となります。
チャネルデータの活用(リアルタイムデータとバッチデータ)
次に、チャネルにより集積したデータの活用についてです。
一方向、双方向の顧客とのタッチにかかわらず取得または分析したデータは広告のクリエイティブやコンタクトセンターのレコメンドエンジンやトークスクリプトとして活用できます。もちろん、顧客行動や購買行動、またはレコメンドスクリプトやセグメントリストなど、全てがリアルタイムで可視化できればよいのですが、大多数の企業について全てリアルタイムで集計処理というのは予算的にも要件的にも現実的ではありません。
一方向でのクリエイティブ作成のための対象顧客の属性情報はデータタンクに溜め、バッチ処理を行い可視化すれば良いですし、双方向でのコミュニケーションの際は顧客との対話という限られた時間で顧客のWEB行動を見れればよいのか、顧客セグメントをKeyとしたレコメンドチャートを見ればよいのか等を選択してリアルタイムで表示すべきデータ設計をすることにより、オペレーターにとっても管理・把握しやすく、結果的に顧客とのコミュニケーションを高水準で担保できるダッシュボードが構築できると言えます。
まとめ
このように、LTVの最大化という視点で見た場合、自社商材・サービスの購買経過時間や顧客ステージ(購買金額など)にあわせたタッチ施策が有効と考えられます。顧客の期待値が下がる(または上がる)時期を見据え、最適なコミュニケーションを最適なチャネルで接触するために、最初の想定モデルをベースにオペレーターによる定性的な情報とは切り分け、いかに購買後の顧客データを定量的に蓄積し、活用していくかを考えていくとLTV向上+顧客満足度向上という成果を掴み取ることが可能となります。
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