カスタマーコンサルティングチームの吉川 直宏です。
マーケティング領域でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は“顧客とのエンゲージメントの強化”、具体的には“コミュニケーションのパーソナライズによる顧客体験の最適化”です。一方でDXが浸透するにつれ、企業内のデータ活用はマーケティングやアナリティクスセクションから、実際に顧客対応を行っているセクションなどに拡大していきます。
マーケティング以外の方にとって顧客体験を設計し、運用し、最適化させることは一見難しいことのように捉えられるかもしれません。しかし基本的なプロセスを押さえさえすれば誰でも顧客体験が設計できるようになりますし、例えば日々顧客対応を行っている方ならデータから顧客インサイトを導き出すことに関してはマーケッターの方より正確な場合もあると思います。今回から私のブログではマーケッター以外の皆様に向けて顧客体験開発プロセスをお伝えしていこうと思います。
こんな方に向けたブログです。
- 直接顧客と対話し顧客体験の提供を担っている営業/店舗/コンタクトセンターの方
- DX推進を担い社内浸透、成果創出を期待されているIT/システムセクションの方
- 顧客体験開発を初めて行うマーケティング/アナリシスセクションの方
顧客体験とは
顧客体験は製品やサービスの認知から使用に至るまでのすべての接点で顧客に提供する体験と定義しています。つまり製品やサービスの使用や消費は言うまでもなく、それ以外も含めたすべての顧客とのつながりが顧客体験であり、顧客エンゲージメントを形成していきます。製品やサービスのコモディティ化が進んだ現在、それ自体が競合企業に対して圧倒的に優位な顧客体験を提供できることは考えにくく、また多様な顧客ニーズにあわせて変化させられる領域も限定的となります。
この状況では広告やCRMと言ったコミュニケーション、購入時の利便性や接客、商品使用時のアフターサービスの充実など製品やサービス以外の顧客体験を多様化する顧客にあわせてパーソナライズして設計・提供していくことが重要になると考えています。
顧客体験開発4つのプロセス
顧客体験は「分析」「設計」「実施」「評価」の4つのプロセス(図1)で開発していき、そのプロセスはシステム側面の「構造高度化」とコミュニケーション側面の「施策高度化」に分けられます。ここからは4つのプロセスの概要を「施策高度化」を中心に説明していきます。
プロセス1:“分析”
分析は、まず企業が“理想とする行動を取った人(Gr.A)”と“理想とする行動を取らなかった人(Gr.B)”にわけ、Grの共通点と相違点探しを行います。Gr.Aに共通する点でGr.AとBでは相違する点を見つけてください。これが解決すべき顧客課題となります。すなわちGr.Bに Gr.Aと同じ体験を提供できれば理想行動を取ってくれる確率が高まると考えられます。
分析を進めていくとGr.Aの中でも共通点がない場合や共通点でさらに性別や年齢など属性情報Grを細分化できる場合が出てきます。この細分化されたGrがセグメントとなります。分析は相違点探しとセグメント構築と認識してください。
プロセス2:“設計”
次にコミュニケーション戦略を設計していきます。事前整理として、まず“カスタマージャーニーマップ”を作成します。これは “理想とする行動を取った人”に共通する行動そのもの、心理状態、顧客体験を時間軸で記載していきます。そして“理想とする行動を取らなかった人”に行動を取らせるためには、どんなセグメントに(who)、どのタイミングで(when)、何を伝えればいいのか(what)を決めていきます。また実施時の費用対効果や反応率など評価指標、ABテストなどPDCAを念頭においたテストプログラムも設定しておきます。
プロセス3:”実施”
実施ではコミュニケーションの具体化と運用を行っていきます。コミュニケーションの具体化は設計したコミュニケーション戦略を、どのチャネルを使って(where)、どんな方法・表現で伝えていくのか(How)にしていくことです。ここは外部の協力会社様に依頼する場合も多くあると思いますので、プロセス②設計の内容をオリエンテーションしていただくことになります。
プロセス4:“評価”
最後のプロセスが評価です。実施したプランに実施後の結果を統合し、施策を評価していきます。評価は基本プロセス②で設定した軸で評価しますが、これは相対的または絶対的に良い、悪いという数値評価が中心となってしまいます。もちろん数値評価がビジネス上重要なのは言うまでもありませんが、それに加え描いたカスタマージャーニーの顧客心理に対してコミュニケーションを行ったことによる心理変化を推測することも重要です。
それにより、なぜ顧客が行動を取ってくれたのか、行動を取らなかったのかの仮説が生まれ、さらなる施策の高度化へ繋がっていくからです。そのうえで週次、月次のタイムスパンではチャネル、表現などの戦術面の改修で高速にPDCAを回していく、四半期は年次ではもう一度分析から見直し戦略面の修正、精緻なPDCAを回していきます。この2つのPDCAサイクルを継続的に行うことで最終的に成果創出を実現していきます。
まとめ
DX化した時代、競合企業に対して持続的な競争優位性として顧客とのエンゲージメントを高めるためには、最適なツール選択・活用が不可欠なのと同様に、顧客体験設計をマーケティングセクション以外の方でも出来ることが重要となってきます。今回の概要編に続き、次回以降は各プロセスについて詳細を説明していければと思いますので、引き続きお読みいただければ幸いです。
トレジャーデータではTreasure Data CDPを活用した顧客分析、カスタマージャーニー開発、施策高度化など顧客体験最適化領域につきましてもレクチャー、アドバイスなどサポートさせていただくことができます。ご興味、困りごとがありましたら担当者までお問い合わせください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。