カスタマーコンサルティングチームの坂本 登です。
前回はTreasure Data CDPで統合したデータのうち、どのデータを重要な指標として活用するか、という議題に対して、私の前職の業界であるソーシャルゲーム業界の事例を元に、KPIの考え方についてお話しいたしました。今回は、CRMというツールではなく、顧客関係を管理する手法としてのCRM、について概要をお話しいたします。
顧客データの扱いにおいては、ITPやCookie規制の影響により以前にも増して、各チャネルから取得したデータに基づく1st Party Dataによる顧客管理や、そして1人の顧客に対して1つのIDを付与し、管理していくという考え方が、業界問わず重要となっております。
Treasure Data CDPは、多種多様なデータを収集、統合に適したツールであるため、CRM活用の用途で、データを扱うための優れたツールです。一方で、CRMとしての考え方の理解がなければ、収集、統合したデータをどのような観点で扱えば良いか・施策に活用すれば良いか、が分からず、業務を推進していくことは難しいと考えております。この記事では、CRMとしての活用のために、Treasure Data CDPを導入している、もしくは導入を検討しているお客様にお役に立てれば幸いです。
CRMとは
CRMとは、Customer Relationship Managementの略であり、直訳すると顧客関係管理です。基本的には自社と顧客の関係をマネジメントすることではありますが、事業のビジネスモデルや会社や組織の考え方に応じて、様々な解釈があると思います。
今回参考にしている文献においては、
- 顧客を適切に識別し
- ターゲットとする顧客の満足度と
- 企業収益の両方を高めるための
- 経営における選択と集中の仕組み
と定義しておりますが、Treasure Data CDPで実現できる顧客データを用いた場合で言うと、
- 顧客の属性及び行動データ等を集計、分析することで、顧客の状況を把握
- 自社で定義した優良顧客、また顧客ロイヤリティにおいて区分
- その区分に応じたターゲティング施策を実行
- 自社の提供サービスを通じて顧客の満足度を高め
- 収益を上げつつ、費用を最適化するような仕組み
と、捉えております。
また、このようなCRM施策を進めるにおいては、
- 自社における優良顧客をどのように定義するのか
- 優良顧客を含む顧客ロイヤリティをどう区分するのか
区分した場合、どうやって優良顧客を維持、または増やし、顧客の満足度を高めることで、収益に結びつけるのか、という点を考えることは重要です。
優良顧客の考え方の一例
優良顧客を考えるにあたり、基本的には収益そのもの、売上と因果関係にある変数(収益をKGIとするならば、KPIとなりうる変数)を定義に入れるのと分かりやすく、良いと思われます。売上であれば、その顧客のある一定期間(年間など)の購入総額で区分するなどが、シンプルに考えられます。売上と因果関係のある行動、例えば、オフラインであればどの程度店舗に訪れたのか、Webサイトの閲覧頻度などは、売上につながると想定されるので、優良顧客を区分するにあたっての変数として加えるのは有りかと考えられます。
一方で、売上以外の変数のうち、何を入れれば良いかについては、悩むところではありますが、データ文脈ですと、購入額が高いお客様のその他の行動/属性データを相関分析をし、ある程度相関が高いものを、変数として含めることが手段としてありえます。
また、上記以外の考え方としては、自社の戦略上、重要とする顧客に関する変数を入れると言う考えも存在します。例えば、戦略としてオンラインで購入する、または直販で購入するお客様を優良顧客としていきたいという方針があった場合には、オンラインでの購入額が高い、もしくは直販での購入額が高い顧客の方を、優良顧客としての変数として入れるなどが考えられます。
あくまで上記は一例となりますが、優良顧客の定義として考えうる変数についてご参考にしてください。
Treasure Data CDPを活用した顧客管理と優良顧客の定義付け
Treasure Data CDPの特徴の一つとして、豊富なデータコネクターから様々なデータソースのデータを収集することができます。そのため、Treasure Data CDPを活用することで、様々なソースからのデータを元にした顧客単位でのデータ統合及びそれに基づく顧客管理が実現できます。例えば、以下のように、顧客属性データを主に、「自社の顧客契約データ」、顧客行動データをオフ/オンラインデータで分けて「販売店商談データ」、「サイト閲覧データ」、「One to One 配信データ」、「アプリデータ」から取得してるとします。
このような場合、顧客契約データは、属性データとして、契約している主サービス、付帯サービスの内容や数を顧客管理のための重要な項目とし顧客の行動データは、各データにおける行動履歴(今回は「最新訪問日」「訪問頻度」)を重要な項目としてあげています。
上記表の顧客A – Dにおいて、優良顧客を属性データを使用して定義する場合、
- 契約しているサービスが多い=売上貢献度が高い顧客である顧客A
を優良顧客と捉えるのが一般的と思われます。
優良顧客を行動データの軸で定義し、
- オフライン行動データを重視する場合は、顧客A
- オンラインデータを重視する場合は、顧客D
- オフ/オンラインデータを組み合わせて定義する場合は、顧客BやC
が優良顧客に近しい顧客になります。このように定義によって優良顧客は変化するものですが、実際にはこれらのすべてのデータを組み合わせて顧客ロイヤリティを定義していく必要があります。前章でも述べた通り、比較的一般的な考え方であるRFM分析などの考え方を参考しつつ、自社で定義した優良顧客の定義と、それに伴なうデータとの相関や関連性を、実データをみながら決めていくことが良いかと思われます。
また、顧客とのコミュニケーションチャネルが複雑化している現状においては、上記のようにオンオフ問わない、属性/行動データの収集や集計及び、データを活用した顧客管理が重要になります。このような観点においては、Treasure Data CDPは、多種多様なデータを収集、統合に適したツールであるため、CRM活用の用途でデータを扱うための優れたツールといえます。
まとめ
今回は、Treasure Data CDPによって収集、統合したデータを用いた施策の考え方の中で、CRM(Customer Relationship Management)概要と優良顧客の定義の考え方を例とともに言及いたしました。今後は顧客データ活用においては、更にCRMの考え方が重要になってくるかと思われます、ぜひ皆さんのお役に立てていれば幸いです。
参考文献:
坂本雅志「CRMの基本」(日本実業出版社)第7刷