カスタマーコンサルティングチームの花岡 明です。
今回はデータドリブンマーケティングのはじめとして、アクセスログを活用したデジタル広告の最適化手法について触れていきたいと思います。CDPを活用されている皆様の中にはマーケティング部門における施策活用を求められることがあるかと存じます。所謂データドリブンマーケティングという手法を活用して施策のPDCAを行っていくのですが、いきなり高度なデータ分析や複数のツールを連携して行っていくのは、準備や整理にリソースが必要となるためquick winを目指すには少し足が長くなるかなと思います。
本来であれば、CDPに格納されているユーザー属性のデータやアクセスログデータ、オフラインのアクションデータや購買データなど多岐にわたるデータをかけ合わせて活用し、マルチチャネルでのアプローチを行っていく戦略をたて、実行することが理想です。今回はCDPを導入したばかりでも、まずはquick winを目指すために、現在配信しているデジタル広告施策の最適化をデータドリブンマーケティングのプロセスを踏まえて行っていくことをお話したいと思います。
データドリブンマーケティングのプロセス
実際のデータドリブンマーケティングは、下記のフローになると思います。
(1)収集
活用可能なユーザーのデータを集めることから始めます。主にデジタルマーケティングで活用できるデータの種類は、多岐にわたるため”何のデータを何のために”集めるかという取捨選択が必要となります。主には現在の課題を明確化するためであったり、施策における目標との乖離の課題を埋めるためなどかと存じます。
まずは、オウンドサイト内のアクセスログデータを収集しましょう。ユーザーがオウンドサイト内でどのような回遊をしているのか、どこからアクセスしてきているのか、どれぐらいの滞在で、何を購入しているのか。これらのデータを集められるようにタグの設置などを進めてみましょう。
(2)可視化
収集したデータを可視化しましょう。まれにSQL上だけで分析まで行ってしまう強者もいらっしゃいますが、多くのマーケターはSQLに明るくなく、理解と分析の前処理として可視化は不可欠なプロセスです。私が携わっているプロジェクトの多くでは、Tableauを活用してデータを可視化することが多く、特別な知識も不要であるためおすすめです。
アクセスログにおいても同様で、改善したい広告のパラメータレベルでアクセスログと突き合わせて、著しくアクション率が低いものはないか、全体で比較したときにスパイクするトピックスはないかを見ていくのに活用してみましょう。恐らく、おおよその課題感がつかめてくるかと思いますので、そこを深ぼっていく分析のフェーズに進みます。
(3)分析
分析フェーズでは先ほどの可視化フェーズで見えてきた数値から読み取れることを整理して、結論を導き出していきます。このフェーズにおいて最も大事なことは、最初にデータ収集を行うときに定めた課題解決や目的からブレないことです。よくある話として、分析で深ぼっていくことが楽しくなり、結局当初の目的とは離れた”なんのためにこの分析をしたんだっけ?”ということもあり無駄な作業になってしまうことがあります。
データの海を渡るための羅針盤として、目的をしっかりとみすえて、仮説を持ってデータの分析にあたっていくことで、効率よく結論づけていくことが出来ると思います。アクセスログにおいても、可視化した際に見えたパフォーマンスが悪い広告が”なぜ効果が悪いのか”という仮設をベースにデータで裏付けを取っていくアプローチを行うと改善すべきポイントが明確化すると思います。
(4)施策プランニング
最後にデータ分析結果から得られた示唆を、アクションプランに落とし込んでKPI化し、評価を行う必要があります。KPI設計については前回ご紹介しましたので、ご参考にして頂けますと幸いです。
実際の事例を別のもので例えながらお話をさせていただきます。
とある魚屋にてキャンペーン実施中、獲得CPAが目標に対して悪化してしまっておりました。最近はマグロが旬で、売れ筋のサーモンもあり、他にも多数の魚の在庫があるにも関わらず、なぜ悪化しているのか解決するためにアクセスログを分析しました。
すると、旬であるマグロの広告からのアクセス数が低く、売れ筋であるサーモンのページ離脱率が悪化していることが見えてきました。恐らく、マグロの広告は最近入稿したばかりで、他の最適化がかかっている魚の広告に競り負けている。サーモンは恐らくターゲットとクリエイティブにズレが生じている可能性があると考え、マグロは露出量を増やしてターゲットリーチを広げる施策を、サーモンはターゲットとクリエイティブを刷新して改善を実施しました。
結果として、各改善施策は合致し、CPAを昨年対比で300%以上の改善を定量的に実行することに成功しました。この分析から改善策の実行まではおよそ1ヶ月であったため、quick winを求める方は、まずは現在配信している広告をアクセスログレベルでもいいので分析を行い、次に続く高度なデータドリブンマーケティング実行の足がかりにしていただきたいと思います。
データドリブンマーケティングのメリット
データは、ターゲット層をより明確にするのに役立ちます。顧客に関するあらゆる情報を得ることで、マーケターはターゲット層をレーザーのように鋭く理解することができます。例えば、CRMからのインサイトは、顧客の行動を予測するマーケターの能力をさらに高めることができます。その結果、適切なメッセージを適切なタイミングで顧客に届けることを保証するマーケティングキャンペーンが可能になります。
データドリブンマーケティング実行に向けたよくある課題
まずは、データを集めることです。データドリブンを目指すマーケティング担当者の多くは、顧客情報を収集するというアイデアに圧倒されてしまいます。どこでデータを手に入れればいいのか。中には、入手可能な情報があまりにも多すぎるために、自分自身が麻痺してしまう人もいます。その結果、データドリブンなキャンペーンを検討することが進まず、施策の改善に打ち出すことが出来ない人が多くいます。すでに多くのデータをCDPに格納していると思いますが、下記のような孤立したデータを扱うのは容易ではありません。
アクセスログデータやCRMデータ、e-コマースや広告ツール、自社のERPシステムに格納しているデータ、その他様々なソフトウェアに蓄積されているデータ、また、これらのデータを集めて、また最新状態にまとめておくこともまた課題の一つです。可視化のフェーズにおいて、収集したデータをマーケティング活用のためにいかにリアルタイム性を保ちながら可視化するかを考えるとダッシュボードの構築が一つの手段だと考えます。組織の中で上記のようなデータがサイロ化されていないケースは珍しいかと思います。多くの場合、部署やチームで分断されており、データの収集から可視化までを行うプロセスの大きな障害となっているのが現実です。
最後にこれらのデータを運用していくには、エンジニアからマーケターまでの強固なチーム体制が必要不可欠だと考えます。大量のデータを扱い環境を構築し、可視化のためのBI構築、課題の吸い上げと改善プランの策定、これらをワンストップで提供出来る組織が今後のDX推進の部署の役割と考えております。
この辺りの詳しいお話はTreasure Achademyでも解説しておりますので、もしご興味をお持ちいただけましたらカスタマーサクセス担当までご連絡ください。