プロフェッショナルサービスチームの小谷 将来です。
前回は、BtoBマーケティングにおける業界の変化と目指す姿について、お話しさせていただきました。変化への適応を図るために、マーケティングプロセスと顧客セグメント毎の「コミュニケーション設計」を行い、それらをスピーディかつ効果的に行うための「小さく早く実行できる態勢づくり」の2点が重要とお伝えいたしました。今回は、BtoBデジタルマーケの理想的な姿を目指す上で、具体的な難所とCDP活用におけるポイントをご紹介させていただければと思います。
TOBE像を目指す上での難所
BtoBマーケティングにおいて、変化への適応を図るための「コミュニケーション設計」と「小さく早く実行できる態勢づくり」の具体的な難所はどういったものになるのでしょうか。
「コミュニケーション設計」は戦略バランスとガバナンス構築
まずは改めて、「コミュニケーション設計」について、言及いたします。本記事でいう「コミュニケーション設計」とはマーケティングの認知、比較検討、商談、購買の一連のファネルにおいて、企業あるいは顧客レベルのセグメント毎に、”タイミング”、”担当者(自社)”、”顧客”、”アクション”を緻密に組み立てる事を指しています。コミュニケーション設計における難所は、①データと経験のバランスが取れた戦略設計ができているか、②設計・構築および展開に向けたガバナンスが効いているかの2点と考えます。
「データ」「経験則」、どちらかに偏った戦略設計になってないか?
コミュニケーション設計を考える上では、カスタマージャーニー等を作成し、施策プランニングをされることかと思います。情報を整理するためには、多様なインプット・経験が必要になります。このとき、経験則に基づく設計は重要な要素であるものの、事実かどうかはあくまで個人の域を超えません。「データに基づく」考えというのは、「事実に基づく」とほぼイコールです。
経験からくる仮説に仮説を積み重ねた戦略設計は非常に高度ですし、リスクも高いといえます。とはいえ、データを過信することも危険です。事実のみを並べているデータは解釈の仕方を間違えると明後日の方向に行く諸刃の剣になり得ます。データからいかに事実を読み解き、分析し、今までの経験知と照らし合わせ、一方に偏らない設計をすることが望ましいです。
「目標に向けて意思が統一」できるガバナンス構築はできているか?
ここで言う「ガバナンス構築」は、「目標」に向かうための組織の「権限」と「ルール」、「プロセス」の事です。常日頃のマーケティング施策の検討においては、PDCAサイクルを図るために、ガバナンスを効かせた目標への道筋立てが必要です。BtoBマーケティングにおける障壁は、マーケティングと営業の組織の壁です。デジタルマーケティングをするにあたり、様々なインプットデータを収集し、適切なタイミングでデータから読み解く分析の示唆を他の組織に発信、分析に基づく施策検討をすることになります。
しかしながら、どちらかの組織の権限が強すぎたり、十分なルール・プロセスが整備されていないと、データの不足・抜け落ち等による分析精度の低さや、ある一方の”感性”を中心とした再現性のない施策の展開等、効果的な成果を上げられないことがあります。企業が定めた目標に向けて、コントロールすべき範囲を定め、組織間の意思を統一するためのガバナンス構築が、組織の成果を十二分に発揮する土台となります。
「小さく」「早く」の意味を正しく理解した態勢づくり
「小さく早く実行できる態勢づくり」は、DXを目指す企業にとって必要不可欠です。BtoBマーケティングの領域においても、デジタルによる課題解決を図ることが基本になってきており、小さな失敗を後の成功に繋げる取り組みが重要です。
しかしながら、今までのやり方とは異なる手法・考え方であるため、キチンと理解した上で実行できている企業は極僅かである認識です。「小ささ」は「ユーザが価値として感じる必要最小限の機能(=施策)」、「早く」は「短い期間での一定リズムの繰り返し」を意味します。これらの態勢づくりは理解の段階から障壁があります。①「価値」の「小ささ」を許容しない企業文化、②成果のスピードを「早さ」とする組織が、態勢実現をより困難にします。
「価値」の「小ささ」を認める企業文化があるか?
企業は、常により高い価値(=効果・成果)を求めます。ある施策を設計したとして、必ず達成基準(目標KPI)を定めますが、達成基準はもっと大きな組織・あるいは会社のKGI・KPIと紐づいています。施策を承認する上層部は現実的な達成基準より、限界目一杯の基準、あるいはKGI・KPIからの逆算によって、当初想定の目標よりも高く設定されることもしばしば見受けられます。それら全てが悪いということではありませんが、価値の「小ささ」の阻害要因となっているのは明らかです。
重要なのは目の前の成果を拾うのではなく、実行した結果、何が原因で成功、失敗したのかを原因分析し、より効果の出る施策、あるいは改善ができる施策等の戦略を立てることです。上層部は、KGIには大きく影響を与えないが、個々の施策の改善によってどのような展望を描けるのかが持つべきマインドであると考えます。上層部の意識が変われば企業文化として定着し、小さな改善活動が至る所で行われ、結果大きな改善に繋がると思います。
「早さ」を短期的なスピードと勘違いしていないか?
「早く」は施策実行までのスピードを示すものではなく、「短い期間での一定リズムの繰り返し」を行うことで、結果として組織全体の実行スピードが早くなることを意味しています。施策・キャンペーンで創出する「価値」を小さく分けた上で、2〜3ヶ月単位に成果を出すよう計画し、都度振り返りのステップを入れることが望ましいです。加えて、通常業務への影響を鑑み、組織体制はトップオーダーの人員と通常業務を極力、分けて構成すべきと考えます。結果、「2−3ヶ月毎に成果を小出しし、通常業務との折り合いをつけ、アウトプット量の変動もしっかりと抑えられると思います。
CDPにおける活用のポイント
本件に関するCDP(TreasureData)活用においては、特に「コミュニケーション設計」において適用されます。CDP(TreasureData)の機能は詰まるところ、以下の3点に集約されます。
- データ収集:色々な顧客データを大量に投入可
- 統合・分析・セグメンテーション:取り込んだデータを柔軟に編集・加工可
- 施策への連携:加工・編集したデータを様々な接続先に連携
コミュニケーションをする顧客像の深化
コミュニケーションの戦略設計をする上では、データに基づく検討が不可欠です。データは一方向からのデータだけではなく、様々なデータ(基幹システム情報、Webログ、MA、第三者評価データ等)によって顧客像をより明確にします。CDP(TreasureData)は①の機能によって、様々なデータを大量に取り込み、②情報の整備、セグメンテーション等をしながら、目的に向かった分析を容易にします。
こと、BtoBマーケティングにおいては、「企業」と「担当者」の情報レイヤーが存在し、BtoC以上にデータの整理が複雑です。企業と見做す単位の整理、担当者として整理すべきデータの特定をし、企業単位・担当者単位での顧客像を捉えることが、より確度の高い分析をする一助になります。
意思統一のためのダッシュボードによる可視化
ガバナンスを効かせるための有効な手立ての1つとして、目的意識を明確に捉えるためにダッシュボードによる可視化があります。ダッシュボードは直感的に物事を捉えるために有効であり、それらを全社的(場合によっては権限コントロールで限定的)に即時に情報を伝えることが可能です。目標とする値の把握、自分の業務の貢献度などが目に見えることでモチベーションの向上が望めます。
CDP(TreasureData)においては、簡易に②の機能でダッシュボード化を行うこともありますが、③の連携機能によって、様々なBIツールへの連携を簡便に行うことが出来ます。今まで、月1回の定例会でしか得られない様な情報も、リアルタイムで情報を更新し、能動的に最新情報を取ることが可能になります。
まとめ
BtoBマーケティングにおける、変化への適応を図るための「コミュニケーション設計」と「小さく早く実行できる態勢づくり」においては、「コミュニケーション設計」は戦略バランスとガバナンス構築、および「小さく」「早く」の意味を正しく理解した態勢づくりが必要となります。
CDP(TreasureData)活用は、特に「コミュニケーション設計」において適用され、コミュニケーションをする顧客像の深化と、意思統一のためのダッシュボードによる可視化を実現することが可能になります。次回以降、BtoBデジタルマーケの実践編として、「データ」に関する内容に触れさせて頂ければと思います。ここまでのご拝読、ありがとうございました。