カスタマーコンサルティングチームの根間 綾です。
新型コロナウィルスの蔓延により企業のデジタルトランスフォーメーション(=デジタルによるビジネスの変革、以降「DX」)が進み、トレジャーデータではさまざまな業種の企業様のご支援をさせていただいています。中でも、製薬企業・医療機器メーカー様においては、コロナ禍でビジネスの課題が浮き彫りになり、業界単位でDXが急速に進んでいるかと思います。
この記事では、製薬企業・医療機器メーカーの皆さまの目に留まることを願いつつ、業界の抱える課題とCDPを介したデータ活用例をご紹介します。内容は医療業界ですが、他の業界にも通じる活用例などを挙げています。ぜひ、医療業界以外の方も最後までお付き合いください。
新型コロナウィルスで浮き彫りになった3つの課題
製薬業界・医療機器業界における課題は、大きく「MR(医療機器メーカーにおいてはSR)活動の制限」「医師の情報源・情報収集形態の多様化」「バラバラに管理されている顧客データ」の3つがあるのではないでしょうか。
課題1 MR活動の制限
2013年以降MRの人数は減少傾向にありましたが、とは言えRx(医療用医薬品)における2019年時点の「医薬品の情報源」のトップはMRの直接訪問でした。ところが2020年1月以降、新型コロナウィルスの流行により、MRは以前のように気軽に病院・クリニックを訪問できなくなりました。その結果、MRの直接訪問がきっかけの処方数は激減しました。
一方で、「MR君」などのメディカル系ポータルサイト、製薬企業サイト、WEB講演会などのオンラインチャネルがMRの直接訪問に取って代わり参照されるケースが急増しています。2021年には「医薬品の情報源」のメディカル系ポータルサイトがトップになりました。医師のこの情報収集の傾向は定着化してきており、新型コロナウィルスが収束した後も続くものと予想されています。
課題2 医師の情報源・情報収集形態の多様化
今まではMRから受動的に情報を受け取っていた医師も、これからは能動的に情報収集をしていきます。製薬企業サイト、メディカル系ポータルサイト、WEB講演会、MR・MSLとのリモート面談、Approved Email(MRからの情報提供メール)、製薬企業のメルマガ、チャットボットなど多数のオンラインチャネルから自身が必要としている情報を探すようになりました。情報源が複数あることで情報収集のタイミングや利用するチャネルも複雑化し、製薬企業は医師ごとのニーズを捉えた適切なタイミング・チャネルで適切なコンテンツを提供する「オムニチャネル」化が必要とされています。
課題3 バラバラに管理されている顧客データ
オムニチャネルを実現するには、顧客(製薬企業では主に医師)データを統合的に管理することが重要です。ところが、担当MRが足で稼いでいた医師のデータとそのほかの行動データが紐づいていないことも、MRを「医薬品の情報源」とする医師が減少している一因と言えます。MRは医師との過去のやりとりを元に情報提供を行ないますが、今や医師は自身で情報収集をするようになっていることは先ほどお伝えした通りです。今MRに求められているのは、医師自身の情報収集状況を把握し、既知の内容を踏まえた付加情報の提供です。
例えば、医療系ポータルサイトで副作用情報を閲覧した医師に対しては、副作用情報を提供するのではなく安全性情報や症例を提供するなどがあります。「データはあるのに活用できていない」という状態を打破し、データを活用してMR活動の質を高めていくことがビジネスの肝となっています。
いかがでしょうか。多かれ少なかれ製薬企業様の多くにある課題感なのではないでしょうか。課題を整理したところで、次にCDP活用例をご紹介します。
CDP活用例
実際にTreasure Data CDPを導入いただいたお客様にはご状況に合わせてカスタマイズしますが、CDP活用例の王道としては以下3つが考えられます。
- 顧客のデータ統合、KOLのインサイト抽出
- 医師のスコアリング判定、オムニチャネルコミュニケーション
- MR活動のダッシュボードによる可視化、営業活動の効率化
- 患者のPSP(ペイシェント・サポート・プログラム)の継続支援
本記事では、顧客側に目を向けた1.2についてご説明します。
CDP活用例1 顧客のデータ統合、KOLのインサイト抽出
医師の処方歴からMRの日報、自社サイトの閲覧状況、WEB講演会の参加状況などのデータをバラバラに管理している企業様も多いと思いますが、CDPではDCFコードなどをキーとしてデータを統合することで、散り散りになっているデータを顧客軸で取りまとめることができます。このデータ統合が顧客理解やデータ活用の基盤となります。
データ統合した結果、一人ひとりの医師のステイタスが明確になり、次に提供すべき情報やインサイトがデータ上読み取れるようになります。特にKOLとなる医師のインサイトが読み取れることは、MR活動やコミュニケーション施策を検討する際の大きな武器となります。
CDP活用例2 医師のスコアリング判定、オムニチャネル/1to1コミュニケーション
医師の情報収集行動や情報源が多様化した現代では、オムニチャネル/1to1コミュニケーションはますます重要になっています。Treasure Data CDPではカスタマージャーニーに基づいたスコアリングロジックを作成することができます。例えば製薬企業様の場合、処方に至るまでの医師の心理・行動、処方へのバリアを、購買決定プロセスのAMTULモデルに沿ったカスタマージャーニーに落とし込んで整理します。
AMTULはAware(認知)、Memory(記憶)、Trial(試用)、Usage(本格使用)、Loyalty(ブランド固定)の略で、どんな行動が購買決定(=処方)につながっているのかを機械学習し、点数化する際のベースとなります。このスコアリングの結果は医師のTier分類の精緻化、スコアに合わせたメッセージの出し分け、未処方医へのWEB講演会案内送付など、個々の医師のニーズに合わせたオムニチャネル/1to1コミュニケーションに活用することができます。
最後に
この記事を通して、少しでもCDP活用に可能性を感じていただけていたら嬉しいです。トレジャーデータではTreasure Data CDP導入支援はもちろん、データ活用に関わるデジタルトランスフォーメーション全般をお手伝いさせていただきます。「社内のデータを統合したい」「MR活動の効率化を図りたい」「新薬上市時のマーケティング施策で活用したい」など、どんなご要望でも結構です。まずは弊社にご連絡ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。