プロジェクトマネージメントの観点について、3回に渡ってお話してきました。今回は、最後のまとめとしてお話させていただきたいと思います。私の経験上の所感に基づいたものとなりますので、あくまで参考として捉えていただければと思います。
プロジェクトのリスクマネージメント(1)
プロジェクトのリスクマネージメント(2)
プロジェクトのリスクマネージメント(3)
リスクマネージメントをなぜ実施するのか
リスクが一覧化されその対応方針などが検討されているという場合には、もはやそれはプロジェクトに与える脅威は最小化されている状態だと言えます。つまり、「将来、発生するかもしれないプロジェクトに影響を与える事象」というものから、「将来発生するかもしれない事象」に置き換えることが出来ることが重要だと考えています。
発生するかもしれない、だが、プロジェクトへの影響は織り込み済み。であれば、リスクを恐れる必要がなくなります。粛々と予定作業を進行していく事ができるということです。(対応策として、「受容」を選択している場合には問題になることもありますが。)常に不安につきまとわれず、ある程度の安心感を持てるという点において、積極的に行っていくことが重要だと考えます。
「心配性すぎる? 」ことの大切さ
私も陥りがちですが、リスク識別を実施していると、現実性の低いものから、ほぼ起こるであろうリスクまで様々なものが識別され、大量のリスクがリストアップされることがあります。また、進行をしている場で、新たなリスクも次々にリストアップされます。その際に、色々な心配をしはじめて現実的ではないリスクまで上げてくることが、一定数の見られます。これには、いい面と悪い面があります。あまりに楽天的だと、リスクがあまり出てこず事前の検討がうまく行かなくなってしまいます。逆に、悲観的に見始めると、リスクが多すぎて結局有効な対処が取れなくなりがちです。
私の経験から行くと、心配性すぎるかな?ぐらいでリスク管理を進めつつ、一定の基準でふるいにかけるが良いと考えます。すでに、第3回でもお話しましたが、プロジェクトメンバーの立場、経験、考え方はそれぞれ違っています。そのため、プロジェクトメンバーそれぞれの視点でリスクを洗い出すことが非常に意味のあることになるという点です。
そのため、一見心配性すぎるように見えても、実は非常に有益な情報などが提供されるということが、多々あります。その点を考え、「批判しない」「まずは話を聞く」という立場で臨み、最終的には統一した基準でフィルターを掛けて整理していくということが望ましいと考えられます。第3回で記載した、リスクマトリクスなどを用いて、一定基準の評価を下せるようにするのが良いでしょう。
記録を残すことの重要性
リスクマネージメントに限らないことですが、記録を残すことも非常に重要なポイントになります。私も長年、プロジェクトの様々な局面で味わってきたことですが、「こんなことあったな」と感じることが、年を取るごとに多くなっています。いつかどこかで見た光景といったことが、往々にして起こりがちです。(歳を取ると、時間がすぎるのが早く感じる原因と言われていますね。)
若い方々と仕事をすると、「だから、言ったのに・・・・・」といったことが多くなることは、皆さん感じているのではないでしょうか。年をとったほうが経験を蓄積することで、安定的に仕事が出来るのは事実だと思います。ただ、それでいいのか?という点もあります。経験があるから上手くマネージメント可能ということを繰り返しては、いつまで経っても属人的な仕事から抜け出せなくなります。
そこで、記録を取ると行った行動が重要になると考えます。記録を取り、プロジェクトを振り返り、共有する。(だから言ったのに、をなくす活動にも繋がります。ログ的な意味で。)多少面倒にはなりますが、手間を惜しまず、リスク管理簿などを整え、レビュー記録を付けると行った作業をこなすことが、プロジェクトの安定につながると思いますので、みなさんもぜひ、意識して実行してください。
さいごに
プロジェクトは、様々な単位で実行されます。また、そのプロジェクトが置かれている状況や、条件などはその時々に変化していくものです。今回、経験といった面でお話をさせていただきましたが、どのプロジェクトをとっても、同じといったものはないですし、それぞれが全く新しいものであることも事実です。プロジェクトマネージメントにおいて、必ず成功する手法といったものはないのが現実だと思います。
ただ、「大きな失敗をしない」であったり「プロジェクトを破綻させない」ために、取れる方法は様々あるのも事実です。リスクマネージメントは、その性質上、様々なプロジェクトで必須の事項となりますし、プロジェクト成功の大きな要因になる活動です。ぜひ、リスクマネージメントに積極的に取り組んでいってください。