カスタマーレプレゼンタティブチームの大屋戸 真章です。
広告代理店、MarTechSaaS企業での経験を経て、現在はデジタル広告のサービスを展開されている広告事業者様、複数の広告サービスを取り扱い、多くの広告主と取引されている広告代理店様の活用サポートを主に担当させて頂いております。これまでは、私の代理店時代に取り組んだプロジェクトでの経験を基にした、プロジェクト事例を各ポイントに分けて紹介させて頂きました。今回は、過去に取り組んだプロジェクトの内容を参考に、ROI等プロジェクト成果の考え方例を紹介したいと思います。
業務効率化プロジェクトの課題と目的
これまで紹介してきた広告配信レポート管理システムのプロジェクト事例は、全社的な業務効率化プロジェクトの一環で立ち上がったものでしたが、当時の課題と目的を改めて以下にまとめさせて頂きます。
課題
- 事業部門メンバーの煩雑化した付帯業務遂行によるリソース逼迫
- 売上・原価・粗利等会計データのサイロ化による先月売上実績数値集計の遅滞
- 先月売上実績数値集計の遅滞による当月売上目標数値設定の遅滞
プロジェクト目的
- 付帯業務の簡素化による事業部門メンバーのリソース軽減
- 会計データ整理と集計システムの高速化による売上実績数値集計の遅滞解消
- 売上実績数値集計の遅滞解消による月初の当月売上目標数値設定
→ 事業部門メンバーのリソース削減と事業活動促進
業務効率化プロジェクトの最終目的は、前述した「事業部門メンバーのリソース削減と事業活動促進」にですが、事業活動が促進された事を証明するためには、「リソース削減による削減コスト」「プロジェクトのおかげで積み上げる事ができた売上数値」を導き出すことになるかと存じます。
プロジェクトの成果は、現場のメンバー自身が、「業務負担が軽くなった」と感じたり、「営業活動がしやすくなった」と感じたりと、定性的な実感値を持って評価されているケースは多いと思います。ただ、これらを対外的にプロジェクトの成果として評価するには、上記のような定性的な評価だけではなく、定量的な評価も一定行える事が大事です。この前提を踏まえて、次に、定量評価するための評価の指標化について、深掘りしていければと思います。
リソース削減に対しての定量評価
業務効率化プロジェクトの最終目的「事業部門メンバーのリソース削減と事業活動促進」の評価指標として挙げられるのは「業務時間の削減時間」と「事業活動により創出された売上数値」の2つかと存じます。
まずは1つ目の「業務時間の削減時間」を定量評価として算出し、プロジェクトのベースの評価とするのが良いと考えます。以下、算出の例です。
- 200人 * 2時間 * 20日 = 8,000時間/月の削減 ※1
- 8,000時間 * 800円 = 6,400,000円/月のコスト削減 ※2
※1 : 1ヶ月の営業日を20日として当てはめた場合
※2 : 事業部門メンバー一人当たりの時給を800円として当てはめた場合
上述の削減効果を参照し、プロジェクトにかかっている原価を掛け合わせて、ROIを算出する事もできます。以下、算出の例です。
- 3人 * 月給600,000円 + 2,000,000/月 = 3,800,000円/月の原価 ※
- 6,400,000円 / 3,800,000円 * 100 = 約168%のROI
※プロジェクトメンバー一人当たりの月給を600,000円として当てはめた場合
上記はあくまで仮定の数値のものですが、プロジェクトによる成果を定量的に金額で評価し、ROIまで算出する事ができました。実際に、プロジェクトによって一人当たりどの程度業務時間の削減ができているかを、正確にトラッキングする事は現実的に難しいかと存じますが、プロジェクト開始後の定期的なヒアリングや工数管理の仕組みを並行して導入する事で、大凡の業務時間を算定する事は可能です。
事業活動に対しての定量評価
続いて、2つ目の「事業活動により創出された売上数値」を定量評価として算出する方法ですが、該当プロジェクトのおかげで見込めた売上のみを対象に見ていきます。
例えば、「プロジェクトによる日次の高度な配信レポート提供」が決め手となり受注できた案件にて見込めた売上はその金額をそのまま評価の対象にして良いと考えます。以下、算出の例です。
- 2,000,000円/月 = 2,000,000円/月の売上
上記の通り、売上数値を評価に反映させるのみなので、それだけ見ると簡単に評価の算出が可能ですが、案件の成功は本来複数の要因から成り立っているケースが多く、単一の要因で成功している案件ばかりではありません。そのような点から、事業活動の拡大に繋げる事を目的とするプロジェクトであれば、「プロジェクト単体」で売上に直結できるようなソリューションやプロダクト展開を計画しておくことで、そのプロジェクト成果の評価が対外的にもされやすくなる、と言えそうです。
業務効率化プロジェクトの最終的な評価
前項まで紹介してきた業務効率化プロジェクトの評価指標である「業務時間の削減時間」と「事業活動により創出された売上数値」を合わせて、以下が本事例での最終的な評価となります。
- 8,000時間 * 800円 = 6,400,000円/月のコスト削減
- 2,000,000円/月 = 2,000,000円/月の売上
- 6,400,000円/月 + 2,000,000円/月 = 8,400,000円/月のコスト効果
- 3人 * 月給600,000円 + 2,000,000 = 3,800,000円/月の原価
- 8,400,000円 / 3,800,000円 * 100 = 約221%のROI
まとめ
- 業務効率化等を目的としたDXプロジェクトのROI算出は難しいと思われがち
- 成果を定量化するために、細かくプロジェクトの目的を分解する
- 定量評価を行いROIを算出することで、対外的にも正しいプロジェクトの評価が可能
今回は業務効率化プロジェクトにおけるROIの考え方について過去の経験を交えて紹介させて頂きました。本記事では仮の数値を当てはめてROI算出をしてみましたが、成果を定量的に金額に置き換えてROIに直すと、意外と原価の回収ができており、むしろ売上にも大きく貢献できている、という評価もできると思います。
ですので、一見、何の売上にも貢献していないプロジェクトであっても、細かな要素に分解し、定量的な指標に置き換えて評価をすることで、役に立っていなかったプロジェクトを一瞬にして価値化する事も可能ですので、原価ばかりを気にしてプロジェクトをクローズする前に、一度、本記事を参考にROI算出を試して頂けますと幸いです。