カスタマーオンボーディングチームの小暮 和基です。
今回はタイトルの通り、マーケターやアナリストなどの実務担当者に対して「CDPとは?」を説明する立場の方、またはCDP初心者の方を想定読者として記事を書かせていただきます。
私は立場上CDPについて説明を求められたり依頼されたりするケースが少なくないのですが、短時間で皆様に深くご理解いただくことはなかなか難しいなと毎回頭を抱えていました。CDPというサービス内容や機能がそもそも初心者には難解で相手方にCDPを理解するための前提知識があるかによっても説明の仕方が変わります。またTreasure Data CDPの利活用パターンも数多くあり、企業によってどこまでお話しすべきかは悩ましいです。
今回の記事では、Treasure Data CDPの導入目的として最も多いマーケティングへの利活用を前提として、「CDPとは?」をマーケターやアナリストなどの実務担当者に対して実際に説明したときに、一番ご理解をいただきやすかったスライドをご紹介します。個人的な経験からくる見解が多分に含まれておりますので、その点はご注意ください。
一般的なCustomer Data Platformの概要説明文
2021年8月時点で、当社ホームページのキービジュアルではCDPをこのように説明しています。
DXの「基盤」
カスタマーデータプラットフォーム
Treasure Data CDPは、組織内に散在しているあらゆるデータを収集・統合・分析できる「基盤」です。組織全体のデータを1つに統合することで、ビジネスを加速させる原動力である「深い顧客理解」をサポートします。引用:当社ホームページ
また同当社サイトでCDPを説明するページでは以下のように記載しています。
CDPの特徴とは?
アメリカのCDP協会(CDP Institute)によると、CDPは次の3つの特徴を持っています。
- パッケージソフトであること
- あらゆるデータを統合して、任意の期間活用できる顧客データベースであること
- 他の分析システムやマーケティングツールからアクセス可能であること
(中略)
簡単にまとめると、CDPは組織全体に散在するあらゆるデータを統合します。そして統合されたデータを分析することで、自社の顧客を理解し、顧客体験向上を実現するソリューションなのです。
CDPサービスを展開する他社様のホームページを見渡したところ、CDPに関しての説明は当社サイトのものとほぼ同一のように見受けられます。
要素として以下の3点でまとめているケースが多いようでした。
- CDPは、社内外に点在するサイロ化データを集約・統合する
- CDPで統合されたデータを元に、顧客理解を深めることができる
- CDP内のデータを外部ツールに連携するなどして、より効果の高いマーケティング施策に繋げることができる
CDPに慣れ親しんだ方であれば、これら3点がプラットフォームとしてのCDPに期待される最大公約な要素であることはすぐにご理解いただけるでしょう。しかし初心者の方はおそらくこの文章を眺めただけではよくわからない、というご感想を持たれることも多いと思います。CDPの利活用コンセプトだけでは抽象的すぎて実務レベルに落とし込めない方が多いようです。
CDP自体はデータETLを行うプラットフォームなので、機能やサービス内容だけを説明しても自社の取り組みが想起しづらいでしょう。一方で実際の使い方は数多くのパターンが存在するため、それらをカバーするようにCDPを1から100まで説明したとしても小難しい割に余計な内容が多すぎる。サービス内容や機能の紹介はそこそこに、あまり時間をかけずにサクッと実務担当者にCDPをご理解いただくにはどうしたら良いでしょうか?
途中加入の実務作業者への”CDPコンセプト”伝え方
さて、ここからようやく本題に入ります。以下は最近私が導入企業様のプロジェクト追加メンバー向けにCDP概要を説明する際によく使っているスライドです。実際には当社サイトに記載があったCDP要素の3点に追加でお話しします。実務担当者にお話しする際のポイントとしては「Treasure Data CDP導入前後におけるプロセスの差分を示しながら、業務イメージは現業務の延長線上にあたるような内容をお話しする」ことです。
これにより、CDPの概要をご理解頂きながら実務イメージも掴んでいただけるようになりました。
左側が導入前、つまりTreasure Data CDPがなかった場合の一般的なデータ活用プロセスイメージです。対し右側がTreasure Data CDP導入後のデータ活用プロセスとなります。
<導入前>
データが分断されているため、分析と施策セグメンテーションはそれぞれツールやデータソースごとに行われます。また分析に使用できるデータ項目は各ツールやデータソースで取得される内容に限定されます。施策セグメンテーションも同様です。いわば「ツールレベルの部分最適を行うプロセス」でした。
<導入後>
対して導入後は、事前に各ツールやデータソースからTreasure Data CDPに投入されたデータを主に個客単位で紐付け・統合することで、単一ツールで取得されるデータ項目に限定されない分析・施策セグメンテーションができるようになります。ここでは「ジャーニーレベルの全体最適を行うプロセス」と位置付けています。実務担当者の方に向けては以下の点を強調することで、今までの業務との差分や実現したい内容のイメージをより具体的に持っていただけることが多いようです。
- 紐付け先のデータ項目を掛け合わせが多項目分析ができるようになる(=ツールAのデータに、ツールBのデータ項目を分析軸に追加することができる)
- 顧客接点データを時系列で把握することにより、ファネルやジャーニー視点での全体把握ができるようになる
- 紐付け先のデータ項目を掛け合わせたセグメンテーションができるようになる(=ツールCのデータだけでなく、ツールDのデータ項目をセグメンテーションに利用することができる)
Treasure Data CDP 導入前 | Treasure Data CDP 導入後 | |
プロセス | ・部分最適化(ツールレベルの最適化) | ・全体最適化(ジャーニーレベルの最適化) |
データ状況 | ・データソースによって分断されている | ・データがTreasure Data CDPに投入され、顧客単位で統合されている |
分析 | ・データソースごとに個別分析 ・分析軸はデータソースの保有データに限定 |
・データソースを掛け合わせた分析が可能 ・分析軸はデータソースの保有データを掛け合わせた数だけ存在 |
施策活用(セグメンテーション) | ・セグメント項目はデータソースの保有データに限定 | ・セグメント項目はデータソースの保有データを掛け合わせた数だけ存在 |
まとめ
これまで記載させていただいた内容は、あくまでもCDPの一般的なマーケティング利活用を導入目的に置いている場合を前提とし、かつマーケターやアナリストなどの方に実務イメージを想起いただけるレベルで(サクッと)CDP概要をお伝えすることを目指したものです。
前述の通りTreasure Data CDPは様々な活用方法が考えられるプラットフォームですので、導入目的が異なればこのコンセプトに沿わないケースもありますし、例えば機械学習(スコアリング)機能や定型レポートの自動集計化、セグメントリストを外部ツールに簡便に連携できることなど追加でお伝えした方が良い内容も多くあります。しかしプロジェクトに新たに加入した方に概要ご理解いただくためのインプットとして、また実際に業務をご自身で進めていただくためのコンセプトとしてご理解をいただきやすい一例ではないかと思っておりますので、ぜひご参考ください。