カスタマーコンサルティングチームの花岡 明です。
今回はカスタマージャーニーマップについてお話します。そもそもカスタマージャーニーマップの役割とは何でしょうか?私は大きく2つの役割があると考えています。
- ビジネスにおける顧客体験を組織全体で共有して、理解するための戦略ツール
- 全てのツール間におけるトラッキング、属性付け、統合に必要なデータを定義をするための整理ツール
戦略的に自社が行っているビジネスが与える顧客体験が共有されていなければ、いつ、誰に、何を、どのようにサービスやコミュニケーションを届けることができるでしょうか。また、多くの複雑さを視覚的にマップすることで、組織全体にカスタマージャーニーの複雑さを共有し、共通の理解を得られることも簡単になります。
データに於いても全てのツールとチームはカスタマージャーニーのどこにいるのかをデータで定義しやすくなります。どのタイミングで顧客に接触できて、そのようなデータを取得するのかというトラッキング計画とアトリビューションモデリングを得ることができるため、マルチタッチアトリビューションでの「何が効いたのか」を把握することが出来ます。カスタマージャーニーマップがなければ、チーム、トラッキング、データには顧客体験を理解するフレームワークがないため、1to1コミュニケーションを行うことが非常に困難になることが考えられます。
カスタマージャーニーの要素
カスタマージャーニーマップを描く際は、ライフサイクルステージ、カスタマージャーニーパスのバリエーション、そしてコンバージョンイベントの3つに焦点を当てています。
- ライフサイクルステージ:リードがカスタマーになるまでの(そしてなった後の)個別の連続したステップのこと。(例:ビジター、リード、クオリファイドリード、オポチュニティ、カスタマー等)
- カスタマージャーニーパス:ある体験の異なるバージョンのこと(例:無料体験の申し込みと、デモを依頼して営業に相談することの違い等)
- コンバージョンイベント:特定のカスタマージャーニーパスを通じて、あるライフサイクルステージから次のライフサイクルステージに移行するためのトリガー(例:フォームからデモをリクエストして、ビジターからリードに移行する等)
では、それぞれの要素をリストアップしていきましょう。
顧客のライフサイクルステージをリストアップ
顧客が購入する前、購入する間、購入した後の主要なライフサイクルステージについて、共通の合意が必要です。これは多くの場合、CRMやマーケティング・オートメーション・ツールですでに定義され、積極的に活用されています。B2Bでは、以下のような形になります。
- 訪問者
- リード
- クオリファイドリード
- オポチュニティ
- 新規顧客
- 顧客
購入後のカスタマージャーニーは、直線的な進行ではないかもしれません。顧客は、アクティブ、非アクティブ、解約など、さまざまな状態の間で揺れ動くかもしれません。これらの状態をリストアップし、循環的な依存関係も含めてマッピングするとよいでしょう。
カスタマージャーニーパスのリスト化
顧客がブランドや製品に接する方法は1つだけではありません。これらの方法により、各ライフサイクルステージごとにマッピングする必要のある異なるインタラクションパスが作成されます。顧客のライフサイクルの各ステージには、以下のような様々な経路があります。
- マーケティングチャネルとキャンペーン(例:広告からランディングページへの誘導とパートナーシップによる紹介
- セールスプロセス(例:無料トライアル vs デモ依頼
- 製品への導入経路(例:セルフサービスでのサインアップ、ランディングページ、代理店でのオンボーディング
- 製品および価格階層(例:スモールプラン、エンタープライズプラン
- ユーザーレベルのセグメンテーション(例:マーケター向けオンボーディング、開発者向けオンボーディング
すべてのライフサイクルステージには、1つ以上のカスタマージャーニーパスがあります。例えば、セールスプロセス(インサイドセールス、セルフサービス)の数は、カスタマージャーニーパスの数を示していますね。
コンバージョンイベントのリスト化
すべてのカスタマージャーニーパス、および各ライフサイクルステージの間には、コンバージョンイベントがあります。これは、人がある体験から次の体験に移るためのアクションが発生する瞬間をリスト化していきます。
- メルマガ登録(ビジターをリードに変える)
- デモリクエスト(リードをオポチュニティに変える)
- 購入(オポチュニティをリードに変える)
イベントトラッキングは、様々なツールが同じようなことを異なる方法でトラッキングするため、しばしば混乱を招きます。データをきれいに保ち、使いやすく、理解しやすいものにするためには、可能な限り一貫性を保つことが重要です。イベントには、Object-Actionフレームワークのような共通の命名規則を採用します。このフレームワークでは、オブジェクトの名前とアクションを過去形で表します。Object-Actionフレームワークには多くの利点があります。
- イベント名が重複しない。固有の「モノ」(データオブジェクト)に特化している
- イベントの検索(例:メルマガに関連するものはすべてメルマガで始まる)、追加(追加のアクション)、維持が容易である
- Object-Actionを持つイベントは、迅速かつ容易に理解できる
カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーの要素とバリエーションを定義したら、次はこれをマップに変換する必要があります。コンピュータの前から離れて、文字通りの地図にしてみましょう。理想の顧客像と同様に、この作業も社内の顧客データを持つ人たちが一堂に会して行うのがベストです。視覚的な作品(「地図」)なので、ホワイトボードや大きな紙を使って、視覚的な作業になることが多いです。
一方の軸には、ライフサイクルのステージを、もう一方の軸には、そのステージにおけるさまざまなカスタマージャーニーの道筋図示します。チームによっては、水平方向のタイムラインベースのマップを作ることもあります。これは、一連のライフサイクルステージを通して、左から右へと顧客が進行していく様子を示しています。他のチームは、垂直方向のファネルベースのマップを選択します。比較的B2Cでは横軸が、B2Bでは縦軸のファネルが好まれる傾向が強いです。
各カスタマーエクスペリエンスの作成と管理
この形式のカスタマージャーニーマップの結果は、2次元のグリッドになります。あるカスタマージャーニーパスのライフサイクルステージにおけるグリッドの各「ギャップ」は、カスタマーエクスペリエンスを表しています。まずは「空白を埋める」ことから始めて、それぞれの体験に名前をつける必要があります。中には、製品の無料トライアルのように、簡単に思いつくものもあります。それ以外のものは、より明確にする必要があります。それぞれの体験の名前が決まったら、それぞれの体験を実現するための舞台裏のオペレーション、つまりツール、チーム、データを理解する必要があります。
コンテンツとチャンネル
それぞれの体験には、コンテンツとチャネルが必要です。この体験の内容と、お客様(または潜在的なお客様)がこの体験をどこで見つけるのかを説明する必要があります。例えば、フリートライアルとプロダクトデモの体験はどちらもリードを顧客に育てるものですが、異なるコンテンツと異なるチャネルを持っています。フリートライアルではメルマガやプロダクトページからのアクションですが、プロダクトデモでは営業が介在しています。また、カスタマージャーニーの中で、コンテンツやチャネルが不足している顧客体験が表面化することもあります。そこを課題と捉えて充実させていく運用も必要ですね。
ツール&テクノロジー
チャネルやコンテンツには、それぞれツールが必要です。カスタマージャーニーマップで描いた体験を提供するために、適切なツールを選択する必要があります。これにより、ツールセットのギャップや重複する機能が明らかになるかもしれません。適切なタイミングで、チャネルで、顧客体験を届けられるツールが選択できているのか、改めて確認を行うことで今後の活動がスムーズになっていくでしょう。
チームとオーナーシップ
それぞれのツールや体験には、それを所有するチームが必要です。例えば、製品のウォークスルーは、チームと担当者が作成・更新する必要があります。彼らは、ツールを選び、各体験の中の要素をデザインし、最新の状態に保つ必要があります。ここには重複があると思います。チームは複数のエクスペリエンスを所有します。ツールは複数のエクスペリエンスを管理することができます。ここでは、すべての依存関係をマッピングします。
- オーナーチームは、他のチームのサポートを必要とする
- ツールによるチームと体験のオーバーラップ(所謂垣根を超える)
- 体験の間とチームの間の橋渡し(ハンドオフ)
あるチームがそれを所有する必要があるが、他のチームのサポートを必要としている場合があります(例えば、販売用のデモ環境を維持するための製品など)。このようなチーム間の依存関係を必ずマッピングしてください。コンテンツ、チャネル、エクスペリエンス、チームが重複している場合があります。同じライブチャットツールが、ウェブサイトでのセールスミーティングの設定や、アプリ内でのカスタマーサポートにも使用されているかもしれません。ツール内のハンドオフを定義する必要があります(セールスチャットでサポートリクエストを転送するなど)。
このようにカスタマーエクスペリエンスにおける裏要素を棚卸ししていき、実現していきたいことに向けて全チームが合意していくことがプロジェクトに於いて非常に重要となります。此処から先はデータをどう定義するのか、モデリングの整理など専門的な話も絡んできますので、気になる方はぜひトレジャーデータへお問い合わせ下さい!