カスタマーレプレゼンタティブチームの大屋戸 真章です。
広告代理店、MarTechSaaS企業での経験を経て、現在はデジタル広告のサービスを展開されている広告事業者様、複数の広告サービスを取り扱い、多くの広告主と取引されている広告代理店様の活用サポートを主に担当させて頂いております。前回は、私の代理店時代に取り組んだプロジェクトでの経験を基にした、広告配信レポート管理システムの運用のポイントを紹介させて頂きました。
Treasure Data CDPを使った広告配信レポート管理システムの構築 – 運用実践 –
これまでは広告配信データを元にしたレポート管理システムの構築について紹介してきましたが、今回はそのレポートを可視化するダッシュボードを社内メンバーに使ってもらうためのコツを私の過去の経験も交えて紹介いたします。
使ってもらえない悩み
前回までの広告配信レポート管理の手法の記事でも紹介してきましたが、社内メンバーが使えるダッシュボードを提供するまでには、事前設計と元データの調達から実運用に至るまで、中長期に渡って複数の工程が存在し、それに伴った準備と対応が必要です。そのような大変な思いをしてやっとリリースできたダッシュボードが、実際に使ってもらいたい現場のメンバーに「使ってもらえない」という悩みに直面しているDX担当者の方も多いのではないでしょうか。
これまで使われてきた散在している既存の業務ツールを、DX改革の下、新たに考案されたダッシュボードに統一して置き換える事で、現場メンバーの業務がとてもラクになり便利になる事は間違いないのですが、そもそもそのダッシュボードを使ってもらえないうちは社内の業務改革は始まりません。この「使ってもらえない」事象には、必ずいくつか理由が存在し、その対策を講じる必要があると考えます。次に、なぜ使ってもらえないのかの理由について考えていきたいと思います。
使ってもらえない理由
私も過去に社内向け業務効率化のプロジェクトに複数携わっておりましたが、その際に現場メンバーに使ってもらえない悩みにぶつかってしまった事があります。理由は主に以下でした。
- ダッシュボードの使い方がわからない
- ダッシュボードがどこにあるのかわからない
- ダッシュボードの存在をそもそも知らない
- ダッシュボードの読み込みが遅く使いにくい
上記理由から、現場メンバーからすると結局使い慣れたExcel等の既存の業務ツールを使った方がラクという事になり、リリースから数ヶ月経っても使われない、という状態が続いていたように思います。ただ、これらの理由を見てみるとダッシュボードそのものが悪い訳ではなく、そもそも既存に置き換わる新しいソリューションの提供の仕方に原因がある、と見ることができると思います。次にそれぞれの悩みへの対策について説明します。
使ってもらうには
- ダッシュボードの使い方がわからない
- ダッシュボードがどこにあるのかわからない
- ダッシュボードの存在をそもそも知らない
上記各種のわからない・知らないへの対策については、提供するだけに終始せず、事前の準備も含めて認知・理解してもらうための能動的なアプローチが必要です。主なアプローチのポイントは以下です。
- 現場組織にエバンジェリスト的なメイン担当を立てる
- 日々閲覧率の高い共有グループウェア・Wikiに共有する
- ダッシュボード更新通知をメール・チャットへ定期送付
- 現場の業務フローに強制的に組み込む
- 既存ツール利用の終了期限を設ける
私の過去のプロジェクトでは、Tableauを採用してダッシュボード構築をしていたのですが、そもそもTableauの使い方を知らない現場のメンバーが沢山いました。Tableauの全てを知る必要は当然無いのですが、操作方法レベルの知識は最低限必要と考え、ダッシュボードそのものの使い方と合わせて社内Wikiにまとめる、というドキュメント整理も行なっていました。
ただ、それだけでは「使って何が良いのか?」は現場メンバーはわからないままです。これを解消するため、現場で関心の高いメンバーだけ集めて、ダッシュボード及びTableauの講習会を行なうようにしました。そうする事で組織内に先陣を切ってダッシュボードを活用してくれるメンバーを作る事もできましたし、ダッシュボードの話題も増え、社内のアクティブユーザーを増やしていく事につなげることができたように思います。
また、社内Wikiへの共有や、Slack等の社内チャットツールへの通知等、現場メンバーの日常の中に溶け込ませる仕組み作りも重要です。これらと組み合わせて、逆にこれまでのツールを使わせないように業務ルールを制定していく事で、漸次的ではありつつも着実に業務改革を進めていくことができます。
- ダッシュボードの読み込みが遅く使いにくい
上記のような悩みは、ダッシュボードそのものを改善していく必要があります。主には構成の元となっているアーキテクチャ・テーブルの設計が原因になっているケースが多いかと思いますが、コア領域なだけに初期段階での考慮が必要になってきます。正直、初期段階で考慮し得なかった欠陥もリリース後に出てくる事も多いかと思います。
リリース後の定期的なメンテナンスと改善のためのアップデートはダッシュボード運用について回るものですが、日々予期しない欠陥を恒常的にリカバリーしていくために、手戻りがしやすい仕様にしておく事も重要なポイントの一つと考えます。
まとめ
- 実際に使う現場のメンバーは自分の提供するダッシュボードについてわからない・知らない事が多いと認識する
- 現場メンバーの日常に溶け込むような提供の仕方・ユースケースを意識する
- 時には旧来のやり方を廃止するといったドラスティックな業務なルール制定も必要
- リリース後の日々の改善のために手戻りしやすい仕様を初期段階で考えておく
- DXに伴う業務改革は徐々に進行していくものと捉える
今回はダッシュボードの社内提供にまつわる悩みやその対策・アプローチ方法について、紹介させて頂きました。提供する対象が社内メンバーであっても、自身のビジネスの顧客となるエンドユーザーへの向き合い方と基本的には変わらないと思いますし、むしろ社内だからこそニーズをヒアリングしやすく、より速やかにより適したソリューションを提供できるものだと考えます。是非、本記事を皆様のプロジェクトに役立てて頂けますと幸いです。