カスタマーコンサルティングチームの櫻井 将允です。
今回は、
- セグメンテーション
- 有望ターゲット探索
いわゆるSTPのうちの「S:セグメンテーション」と「T:ターゲティング」です。
私は、「S:セグメンテーション」と「T:ターゲティング」は「生活者について考える」STEP、「P:ポジショニング」は「提供価値を考える」STEPだと思います。今回は上記の前半STEPとなる「生活者について考える」部分についてご紹介します。
セグメンテーション
大きくは3つのSTEPで進めています。
- 知見から仮説を出す
- 切り口となる変数ごとにKGI/KPIとの関係性や規模を確認
- 組み合わせてセグメント案を作り、統廃合する
1.知見から仮説を出す
このSTEPでは、これまでの知見から切り口として筋の良さそうなものをいろいろ出してみます。
- 過去に行った分析結果や施策結果をもとに考える
- 関係者の意見を聞いて考える
の両面が必要です。情報が不足しているケースは、基礎的な集計結果をもとに考えます。売上拡大などの目的に合わせて必要な切り口を考えます。切り口を考える際に使える変数として例えば以下の4つの軸があります。
発散のフェーズなので、まずはいろいろ出してみることが重要なのですが、見返すタイミング・考えをまとめるタイミングで意識した方が良い点は、以下2点です。
- データでの再現性が可能かどうか?
- 施策やニーズとの繋がりが考えられる切り口であるか?
データでの再現性が容易かどうか?
目的によっては異なりますが、理想的なものとして、実行動データや属性データなど最新情報が常に取得できるデータを用いた切り口の方が望ましいです。購入意向や満足度などアンケートデータは常に全数・最新の情報が取れるわけではないため、同一人物での再現性は難しいです。
また、意識データの場合は、例えば満足度を10点満点中何点か?と尋ねた場合、回答者によって物差しが異なるので、実は同じ点数だけど違う水準の人と捉えられるリスクがあります。(部署のミッションによっては重要指標になりうるため、目的に応じて有効性は変わります。)一方、再現性がある代表的なデータとしては、これらです。
- 会員データ
- 実購買/利用データ
- Web閲覧データ
これらのデータを使った方がKGI/KPIといった成果との連動、施策の実効性が高まります。
施策やニーズとの繋がりが考えられる切り口であるか?
最終的には「施策」で生活者に向き合うことになりますので、実現可能な施策(手段・内容)でアプローチできることが重要になります。実現性が低い場合は向き合う対象から外す必要が出てきますので、「施策との繋がり」は意識しましょう。性別や年代、ライフステージなどデモグラフィックな情報を使うことも多いと思いますが、顧客分析をすると、どの性別・年代も買っているといったように従来の分け方ではうまく機能しないケースが増えてきていると思います。
そのため、様々な生活者を「ニーズ」で分けてみることも有効です。「ニーズ」軸で切り分けると、施策手段・内容とも連動しやすくなる点(訴求内容にニーズに合わせるなど)に加えて、事業の新規開発や育成との繋ぎも考えやすくなります(商品開発など)。
2.切り口となる変数ごとにKGI/KPIとの関係性や規模を確認
知見や仮説から考えた切り口について、実際にデータを集計して筋の良し悪しを確認します。変数ごとにKGI/KPIとの関係性や過去の施策の反応率を見たり、規模を見たりします。
KGI/KPIの高さや過去の施策の反応率を重視すると、顧客獲得率など効率は高まる一方、そもそものターゲット母数は小さくなりやすいです。そのため、短期的な視点での必要なターゲットになることが多いです。一方、規模を重視すると効率は下がりますが、向き合える生活者の規模は増しますので中長期的なターゲットとなることが多いです。
切り口に使う変数がこれらの視点で見たときにどのような関係にあるのかを確認します。例えば以下のように閲覧有無で差が見られるため、閲覧ありをさらに分解して量で比較したときに、そこの差が小さければ規模も小さくなりますので、閲覧量を使う必要はあまりないです。(他の変数と組み合わせて差が出る、戦略上必要な場合は使うこともあります)
3.組み合わせてセグメント案を作り、統廃合する
知見や仮説、実際のデータを見た上でセグメント案を作ります。組み合わせると多岐に渡るセグメントができると思いますが、
- 人数が小さすぎる
- KGI/KPIや過去の施策の反応などが似た傾向
- 施策が似ている
- 定義が複雑
上記のものは基本的にまとめてしまい、シンプルにする方が良いです。セグメントの定義が複雑だったり、セグメントの数自体が多すぎると関係者が理解するのも運用も難しくなりますので、できる限りシンプルな方が望ましいと思います。最終的に数が少ない/定義がシンプルといったようにいろいろ議論したり、分析したりする意味があったのか?といったレベルのものになることもありますが、「なぜこのセグメントを?」という根拠としてこのプロセスは重要だと思います。
有望ターゲット探索
セグメンテーションの次はターゲティングです。特に意識している点は以下の2点です。
- KGIやKPI達成に必要な数への意識を忘れないようにする。
- 複数のターゲット、複数の施策を用意する。
1.KGIやKPI達成に必要な数への意識を忘れないようにする。
「効率が良いからこのセグメント」といった時に、本当にそのセグメントをターゲットとして施策をして目標が達成できるのかを忘れてはいけません。売上であれば、誰が、どれくらい買うのかとなりますので、
- 買ってくれるであろう人数は足りるのか?
- 1人あたりの合計金額(頻度、個数、単価)は足りるのか?
という視点で目標に到達するために必要なセグメントをターゲットとして向き合う必要があります。誰に、どれくらい買ってもらうのか?、目標から逆算した設計が必要です。
2.複数のターゲット、複数の施策を用意する。
目標から逆算すると、複数のターゲットが必要なことは理解できると思います。各ターゲットは同じ施策では動かないと思います。動くならそもそも分けておく必要がないものでもあります。アプローチする手段・内容、ターゲットが持つニーズやターゲットの状態といった点を考慮して、それぞれのターゲットに適した施策を用意しましょう。このようにして複数のターゲットと各ターゲットで達成すべき目標、アプローチの方法・内容を決めることは、以下のような利点があると思います。
- 関係者全体の共通理解を得られる
- より早い効果検証が可能
- より正確な判断が可能になる
誰にどれだけ買ってもらうかやターゲットのプライオリティを関係者全体で理解する
どのターゲットの動きが目標と照らし合わせて良い/悪いのか確認ができる
効果を早く正確に理解できるが故に、正確な判断ができる
机上の空論になってしまうことを避けるだけでなく、早く・正確なPDCAが実現できます。
まとめ
今回はセグメンテーションと有望ターゲット探索についてでした。セグメンテーション、ターゲティングどちらも一貫して、KGI/KPIの目標達成の実現性を意識する必要があります。実際の施策まで考える際にはターゲットの理解(ペルソナやカスタマージャーニーの理解)が必要です。こちらはまた別の機会にご紹介しようと思います。
読んでくださってありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。