カスタマーレプリゼンタティブチームの大屋戸 真章です。
Treasure Data CDPを活用していく中で、Google広告やFacebook広告などといったデジタル広告の配信データは最もよく取り扱われ、馴染みのあるデータの一種です。複数のデジタル広告の配信データを収集し、トレジャーデータにて加工・集計、ダッシュボードでの可視化やスプレッドシートへの書き出しまでの工程を自動化して、業務効率アップに取り組んでいるケースは多いかと思います。
今回は、私が過去実際に取り組んだプロジェクトの経験を基に、多くの広告案件を抱える広告代理店・広告主の方々が活用できる、広告配信レポート管理の手法を紹介します。
本事例の背景
今回紹介する広告配信レポート管理の手法は、私が関わっていたプロジェクトは全社的な業務効率化プロジェクトの一環で立ち上がったものでした。当時抱えていた課題は主に以下二点です。
- 広告主に提出する配信報告用レポートの手動作成によるリソース逼迫
- 社内KPI数値管理の手動シート更新による数値反映の遅滞
これらは全てExcelで作成し、手動作業で複数のメンバーが対応していました。取り扱っている広告サービスが多くなればなるほど、その分の手動作業が積み増しになり、営業メンバー・バックオフィスを担うメンバーのリソースを逼迫していました。
※自分が関わったプロジェクトでは約50の広告サービスが対象でした。
これらを解決すべく、「脱Excel化」・「業務の自動化」をテーマにプロジェクトに取り組んでいました。次に、それぞれの業務で抱える課題について説明します。
配信報告用レポート作成業務における課題
クライアントである広告主に対して、広告の配信結果を報告するためのレポート作成業務は広告代理店にとっては切っても切れない重要な業務の一つと言えます。顧客への報告が目的であるが故に、報告の迅速さ・内容の正確さが求められ、その性質上負荷が集中しやすい業務とも言えます。
以下、配信報告用レポート作成業務の一例です。
- 広告サービス別レポート・全体数値レポートそれぞれのExcel専用シートを準備
- 各広告サービスの管理画面から条件に沿ってレポートデータをダウンロード
- ダウンロードしたレポートデータを元データとして、専用シートにコピー&ペースト
- 上記工程を配信している広告サービス分、繰り返す
- 複数の広告サービスの数値を集計し、全体数値のシートに出力する
- 各シートの数値が問題無いか目視チェック
- 配信報告用レポートとしてファイルの体裁を整え、広告主へ提出
上記の作業工程を広告主の数だけ行う必要があり、複数の単純工程を毎日「正確」にこなさなくてはいけません。これらの業務量は膨大であり、日々運用していくためには「まとまった作業リソースの確保」と「統一された業務ルールの運用」が必要です。
社内KPI数値管理シート更新業務における課題
併せて、各営業チームのKPI数値の進捗確認も毎日行われる業務です。目標数値に対して、「現在どれくらいの到達率なのか?」「足りない数値はあとどれくらいなのか?」を把握するためには、最新の数値を共通の画面で、日々確認できる状態でないといけません。
以下、社内KPI数値管理シート更新業務の一例です。
- 共通の数値管理用のExcelシートを準備
- 各広告サービスの管理画面から条件に沿ってレポートデータをダウンロード
- ダウンロードしたレポートデータを元データとして、専用シートにコピー&ペースト
- 上記工程を取り扱っている広告サービス分、繰り返す
- シートの数値が問題無いか目視チェック
- 最新数値の更新をチームメンバーに連絡・共有
上記を共有Excelで実施すると、データ量が多ければ多いほど動作が重くなり、複数のチームメンバーがスムーズに閲覧する事が困難になります。また、手動更新が故に担当者の裁量によって更新タイミングがまちまちになり、定刻での進捗確認もできません。これらを踏まえると、社内KPI数値管理シートは「大量データの集計を簡単に処理でき」且つ「定期的に最新数値を確認(更新)できる」必要があります。
共通課題のまとめ
前述の通り、広告配信レポート管理の業務を日々運用していくためには、以下のような様々な課題が立ちはだかりますが、一方でアウトプットまでの作業工程は共通しているため、仕組み化・自動化が行いやすく、これらの課題はTreasure Data CDPを活用する事で全てクリアできます。
- 複数の単純作業を正確に処理→機械による処理の定型化
- まとまった作業リソースの確保→自動化による省人化
- 統一された業務ルールの運用→定型処理のワークフロー化
- 大量データの集計を簡単処理→大規模集計/分析を得意とするクエリエンジンの活用
- 定期的に最新数値を更新→処理のスケジュール化
- =Treasure Data CDPの機能で全て補完可能
では次に、これらの仕組みを実際にTreasure Data CDPを使ってシステム構築する場合の全体イメージについて説明していきます。
システム全体イメージ
上記図2が大まかなシステム構築のイメージになります。
まずはレポート出力したい広告サービスの配信データをそれぞれの仕様に合わせてデータ収集します。収集の方法は主に以下の3種類です。
- Data Connectorを使ったデータ連携
- Custom Scriptを使った広告レポート API を用いた連携
- CSV等のファイルストレージに格納し、Data Connector を使ったファイル連携
次に、Treasure Data CDP内にて広告配信レポート出力に必要な項目(カラム)に名寄せ・統一し、集計作業を行います。各広告サービスの配信データの中身は、それぞれ意味合いは同じでもカラム名が異なる項目があるケースが多々あります。これらを同一視し、統一した処理ができるようにならないと、出稿先がそれぞれ異なる広告主毎のレポート出力が自動化できません。ですので、別途共通カラム表を前もって準備し、名寄せの工程を入れる必要があります。
以下、名寄せの例です。
- 「広告表示」「impression」→「IMPS」広告表示回数として統一
- 「CV」「購入回数」→「CONVERSIONS」広告成果件数として統一
上記のような事前処理を行った上で、日別・月別・クリエイティブ別等、出力したい単位でのデータ集計を SQL・Workflow を使って定期実行されるように実装を行います。
最後に、配信報告用レポートとしてファイル出力、社内 KPI 数値管理用にダッシュボードへ可視化を行う等、用途に合わせてデータの出力を行います。配信報告用レポートであれば、Google スプレッドシートへ出力する事で、Excel・CSV ファイルとして扱えるようになり他の資料へ組み込みやすくなりますし、社内KPI数値管理であればTableauやDOMOといったBIツールのSaaSを活用する事により、複数メンバーが同時に接続しても動作が重くなる心配は無いですし、グラフ等で視覚的に見やすく、簡単に進捗把握をする事が可能です。
このように、大きく3つの工程を運用していく事で広告配信レポート管理を行います。次に、今回の仕組みのそもそもの目的と事前に着目しておくべきポイントを整理していきます。
目的とポイント整理
前述した課題から今回紹介する広告配信レポート管理の主な目的を以下のように定義します。
- 配信報告用レポート出力の自動化
- 社内KPI数値管理シートの内容更新の自動化
- 複数の広告サービスを横断した数値集計・分析※NEW
三つ目の目的として挙げた「複数の広告サービスを横断した数値集計・分析」は、これまで触れてきませんでしたが、前の二つを自動化していく過程の「名寄せ・統一」を経る事で実現可能になります。これができると、ユーザー任意の自由な条件が指定でき、柔軟にデータ集計/分析が可能なため、データの用途が拡がり利便性が飛躍的に向上します。これらを実現していくにあたって、事前に把握・定義しておくべきポイントがいくつかありますので、以下に整理していきます。
- 管理対象の広告サービスの策定
- 案件DBの作成と定義
- 共通カラム表の作成と定義
- 出力するレポート内容の定義
「管理対象の広告サービスの策定」についてですが、実際にレポート出力する対象の広告サービスをあらかじめ決めておきます。
また前述した通り、一定の共通した数値項目はあるものの、カラム名が異なっていたり、独自の数値項目を持っていたり、広告サービスによってレポートの仕様が違います。管理する広告サービスとレポート仕様の内容によって、出力可能なレポート内容・カラムに影響を及ぼすため、ここで事前に把握しておく必要があります。以降、各ポイントについては次回解説をしていきます。
まとめ
- レポートデータの自動処理はTreasure Data CDPとの相性が良く、各機能で全て補完可能
- Treasure Data CDPではData Connector・Custom Script・ファイル連携によりデータ収集
- 広告サービス毎でレポート仕様・中身は異なるため共通ルールを作って名寄せを行う
- 名寄せ・統一の処理を行う事で、複数の広告サービスを横断した数値集計・分析が可能に
今回は、広告配信レポート管理にまつわる課題の解説と、Treasure Data CDPの活用イメージについて紹介させて頂きました。次回は、広告配信レポート管理システム構築に向けての事前設計のポイントについて解説したいと思います。