本記事は「CDP」という言葉に明確なイメージをお持ちでないCDP初心者の方向けに、トレジャーアカデミーが実施している「はじめてのCDP」セミナーの内容をビデオを中心に編集した「特別コンテンツ」になります。
1. CDPとは何か?
CDP=「Customer Data Platform」という言葉は CDP Institute と呼ばれるところで定義されており、以下の3つの要件を満たしているものとされています:
- パッケージ化されたソフトウェア
- 永続的で統一された顧客データベース
- 他のシステムからアクセス可能
いきなりこれらの要件をならべても「なるほど」とはなりませんね。まず、これらが具体的に何を意味しているのかを理解していくことにしましょう。ビデオをご覧ください。
まとめ
いかがでしたか?CDPという言葉の定義は少しお堅い印象を受けられたと思いますが、現時点で頭に留めておいてほしいのは、
- CDP はとにもかくにもC(顧客)のためのプラットフォームである
- CDP と使い始めるのに特別な技術やスキルは必要ない
- 散財するあらゆる顧客のデータを永続的に収集、管理する顧客データベースを根幹に持つ
- CDP は「プラットフォーム」であり「ツール」ではない。CDPはあらゆる「ツール」に接続し、顧客データを提供する「プラットフォーム」である
この後の記事を読んでいただければ、CDPという言葉の解像度はより上がっていくことになるでしょう。
2. なぜCDPが必要とされているのか?
もともと顧客のデータを集め、顧客とのコミュニケーションを深めるために活用する、という使い方はもちろん昔から行われていたものです。それでは今なぜCDPという言葉が普及してきているのでしょうか?ビデオで解説を聞いてみましょう。
まとめ
昔からの試みというのは Face to Face で顧客とコミュニケーションできた時代のことです。データと呼ばれるものは人が把握しきれる程度の量と種類で(とたえばエクセルのシートなどに)一元管理されていたのに対し、現代のビジネス環境では、データの種類と量が爆発的に増え、かつそれらが様々な場所に散財することになったため、人が簡単に把握することも一元管理することも容易でなくなってしまいました。
CDPはそんな現代のビジネス環境において、顧客データを統合管理するためのプラットフォームとなるために必要とされているものになっています。さらにデータの「管理」のみにとどまらず、分析や機械学習によってユーザーインサイトを深掘りし、かつマーケティングツールと連携し、施策実行のためのプラットフォームとしての役割も荷なっており、施策の考案や実行を行うマーケターにとっても重宝される存在となっています。
(余談)
Face to Face の言葉で余談ですが、当時リテール業界などの販売に関わる業界ではデータプラットフォームは簡易的で、ゆえに販売員の頭の中で自身の一人一人の顧客の様々な情報、状況が把握されていました。そして販売員と顧客が直接コミュニケーションをとった上で、販売員が頭の中の顧客情報と自身のKKD(経験、知識、勘)を組み合わせ、顧客との今後の最適なコミュニケーションを判断し、実行していく。これが一般的でした。このようなサービス提供のあり方は現代でももちろん貴重な手段ではありますが、あくまでも販売員の頭の中での顧客理解、加えて経験、知識、勘に依存する属人的なこの手段は、継承も難しく拡張性がありません。
また、最近コロナの流行によって販売員と顧客とのコミュニケーションのあり方も変わってきました。実際に直接お客さんと対面して「何が必要か」「何に困っているか」を直接聞き出していくことができた時は、最適な判断がすぐにできていましたが、お客さんとのコミュニケーションが直接できないようなケースが増えてきました。
これはリテール業界に限らず、全ての業界で起きていることです。顧客はオフラインでの直接コミュニケーションを避け、主にオンラインでのコミュニケーションや自分で購入を判断するようになりました。こういう(顧客の気持ちを直接聞き出すことができない)状況下では、顧客との最適なコミュニケーションをとるためにはデータに基づいた判断が不可欠となります。オンライン・オフラインに関わらず顧客の様々なデータを収集、統合し、そこから顧客が何を望んでいるかを判断しなければなりません。それを行うためのプラットフォームがまさにCDPです。データの上では顧客は無言ですが、一方でさまざまな潜在的なニーズを示すメッセージを無数に秘めています。CDPは顧客の潜在ニーズをデータによって発掘するためのプラットフォームと言うこともできます。
3. CDPの全体像(データの流れから読み解く)
CDPはデータプラットフォームの一種ですが、
- データインプット
- 内部処理(データ統合、顧客情報拡張)
- データアウトプット
これら全てに“C”DPらしい特徴を持っています。これらの特徴を一つ一つ抑えていくと、CDPの全体像が見えてくることになります。
まとめ
【インプット】CDP における「データ収集」について
何度も言っておりますが、CDPにおいては、その目的が全て「顧客のため」という枕詞がつくことになります。データ収集においてそれが意味するところは、1番目の特徴である「自社のあらゆる顧客のデータをまず集めてこよう」になります。データプラットフォーム自身は、顧客に限らずあらゆるデータを収集することが可能ですが、CDPにおいてはとにもかくにも顧客データの収集です。それもWebログや広告ログなどのオンラインデータに限らず、ソーシャルネットワークデータ、 POSやCRMなどの外部ベンダー・データウェアハウスのデータ、アンケートデータやリアル店舗データなどのオフラインのデータなど、存在する全ての顧客データをターゲットにしています。
CDP はそれらのデータの一時ソースにはなりませんが、その全てのデータソースに統一的かつ簡単にアクセス・取得するための「コネクタ」を用意し、全ての顧客データを収集し・統合した永続的な顧客データベースを構築します。また、2番目の特徴に「顧客データだけではなく、外部データも集めてこよう」というのがあります。これは先ほどの話と矛盾すると思われるかもしれませんが、ここでもCDPのコンセプトは失われていません。
一言に外部データと言っても天気や気温、地震のなどの自然データや、他者の興味関心データ、統計データなど様々ですが、CDPにおいてそれらを収集する目的は「自社の顧客の情報をよりリッチにするため」と一貫しております。つまり、例えば地震データだけを分析して地震予測を行うための目的ではなく、顧客の行動履歴に天気のデータを付与して「天候によって顧客の行動パターンは異なるのか」、自身の顧客の興味のある分野について、外部データの興味関心データを紐づけることによって他の興味関心を引き出していく、そういった使い方をします。
【内部処理】CDP における「データ統合」「顧客情報拡張」について
データを収集してから、それらをもとにマーケティング連携を行う間に、内部処理というフェーズが必要になります。単純にデータを収集しただけでは準備不足だからです。「データ統合」はこれによって顧客の情報を統一的にみれるようにするための作業になります。一方「顧客情報拡張」は、統合されたデータに対して分析や機械学習による予測、カスタマージャーニー作成などによって新たに有益な情報を得るための作業です。
【アウトプット】CDP における「施策連携」について
続いて、アウトプットの特徴を説明します。CDPにおけるアウトプットは特徴的で、一般的なアウトプットである「分析、レポーティング」にとどまりません。CDP は様々なマーケティングツールと連携し、施策を実行していくことを主なアウトプットに掲げています。
最後に
データの流れからCDPの特徴を考えた時、インプット・内部処理・アウトプット、どのフェーズにおいても「顧客のため」とう目的を強くされた特徴があることが理解できたと思います。ただ、特に内部処理やアウトプットに関しては、それらの特徴を言葉で解説しただけではまだ具体的なイメージを持つのは難しいと思います。次回は、これらのフェーズを一つ一つ具体的に見ていくことにしましょう。
はじめてのCDP – 中編:CDPのインプットからアウトプットまでの特徴を理解しよう –
はじめてのCDP – 後編:CDP周辺のマーケティング用語を理解し、立ち位置の違いを理解しよう –