カスタマーアクセラレーションチームの寺本 敬太です。
今回のテーマはデジタル化とHRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)です。「コンタクトセンターのDXだ!」と叫ばれて久しい時代ですが、デジタル化を標榜するあまりセンター運営にとって大事なHRMやそれに基づくオペレーションが置き去りにされてしまい、デジタル化との連動が取れていないセンターも散見されます。そのため、より実態に近い事例を基に解説してまいります。
センターにおけるデジタイゼーションとデジタライゼーション
まずはDXやデジタル化の定義を考えてみましょう。少し前に話題になったITとICTの考え方の違いと同様、DXもゴールを整理しておかないと議論がまとまりません。様々な方が多様な媒体で触れているのでご存知の方も多いと思いますが、特にオペレーションや運用に直結するセンターにおいて、このアプローチを間違えてしまうと”イメージとは違う使えないDX”が出来上がってしまいます。詳細は割愛しますが、端的にセンターにおいてはしっかりとアプローチ手法を区分けして考えていくことが重要です。
デジタイゼーション/既存のビジネスプロセスをデジタル化する
センターにおいては、手間=工数削減です。小さなところでは、SVへエスカレーションの際に内容を印刷したり、フィードバックや会議の際にペーパーを印刷したり。大きな枠ではサイロ化されたチャネル間データを自動ではなく手動で名寄せしていたり・・といった人の手でやっていたオペレーションのデジタル化を指します。ヘッドカウントでお金をもらっているセンターでは自動化を行いつつ、オペレーション改善などに人を配置転換することが必要になるケースもあります。
デジタライゼーション/既存のビジネスモデルをデジタルで変革する
顧客分析を行ったり、顧客体験の設計や新規事業や新規チャネルの創出などに関わるソリューションやアーキテクチャの検討や実行を指します。DXとは基本的にこちらを意図している事が多いため、部署間を跨いだ制度設計を含めた変革が必要になります。
デジタル化とヒューマンリソースの役割定義
上記のように区分けして考えると、特にCC業界は運用やBPOをアウトソースや関連会社に任せているケースも多く色々制約もあるためにその具体的な障壁が見えてきます。コスト面もそうですが特に顕著なのは、今まで育んできたコンタクトセンターのスキルをもっている人材と、デジタル化を推進する人材のヒューマンスキルの違いというのが大きな課題なのではないかと考えています。
もちろん、デジタル化が推進できる幅の広い優れた人材も在籍しているとは思いますが、そのような方は現業との兼務などで負担が多くなるため、推進遅延や負担をかけすぎて人材流出に繋がる可能性もでてきてしまいます。また、デジタル化を推進し運用面まで考慮した場合は、一足飛びにデジタライゼーションを標榜するよりは、人の役割を整理し制約や将来的なデータ統合を見据えたデジタイゼーションを軸にまずは検討と整理を進めるというのが堅実です。
※画像引用:東京都デジタル人材確保・育成基本方針
デジタイゼーションとHRMによるオペレーターの定着率向上
先述の通り、デジタイゼーションを進めたとして次に課題となるのが運用であり、オペレーターのスキルやオペレーションの変革によるハレーションをいかにコントロールするかが重要になります。今でも多様な画面を扱う負荷の高いオペレーターの定着率をどのようにコントロールすればよいか迷ってしまいます。
昨今のセンターにおいて、Botなどにより顧客対応自体は半自動化されており負荷が減っている部分はありますが、システムが多様化したためにそれを扱うためのプロセスや習熟が必要になっているため、デジタイゼーションに即したスキルを整理して定着率向上を目指す事が重要です。
【HRMの一例】
- 採用・トレーニング
- パフォーマンスチームの構築
- チームやシステムの評価
・ミニマムスキル定義 (顧客対応+デジタルスキルの必須要件を定義)
・採用計画
・トレーニング(数日〜1ヶ月程度)
・コーチング
・エンパワーメント(オペレーターの自律性促進)
・オペレーターのモチベーション管理
・チームやオペレーター毎のKPIやKGI設計
・チームによるシステムUXなどの評価(ディスカッション)
・システムやオペレーターを含めた評価FBやESなどの満足度把握
まとめ
今回は少し視野を広げ、コンタクトセンターにおけるDXを主題に解説してみました。DXという言葉自体が流行りすぎてブームになってしまっている現状で、まずは着実に人材面や運用面に目を向けて変革していくと良いのではないかと個人的に考えており、皆様の検討の一助になれば幸いです。